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「何、ボロ雑巾みたいになってんだよ?」
あの犯罪が起きた夜、
西川くんが凪子に向けて放った言葉と、
その西川君と、隣にいた私を失意の眼で見つめる凪子の顔がずっと忘れられないでいた。
「…………ヒドイ……」
好きな人に、犯された後の姿を目撃者され、
その横には、犯人との仲介になったと言っても過言ではない私が目を真ん丸にして言葉を失っている。
「なんで……葵が?」
あの時の凪子が、
今の自分と重なって思い出されてしまう。
「何、今さら抵抗してんの?ワケわかんねー!」
…………″ゴメンなさい″
______Riririri!
「さっきから電話うるせーぞ!電源切れよ!」
何度、謝っても、
凪子の心の傷は一生きえないし、
「朴?はく?なんだ?韓国人か?男?女?」
「ちょっと、触んないで!」
私が西川君を奪うために、凪子を陥れいれたという疑惑は、
彼女の中から消えることはない。
「あー、もしもっ!さっきから電話しつこいんだけど?」
玄関から靴のまま勝手に上がり込んで、
私をねじ伏せたまま、
朴さんからの着信を勝手に取ってしまったウサギ男____
「勝手に喋んないで!」
私の口を左手で押さえ込んで、朴さんと通話し始めた。
「俺?
そう、この、山村葵の情夫だよ!」
年中繁殖期だという兎は、
メスもその雄をすんなりと受け入れているんだろうか?
「は?彼氏じゃねーなぁ!韓国人、わかる?人間便器って言葉!」
その盛りのついた雄を、
蔑ずんだりは、
しないんだろうか?
「なんなら、中継してやろうか?マグロ女のリアルエッチ!」
………………しないんだろうな。
そこには、子孫を残すという同じ目的があって、
本能でそれを遂行しているのだから。
「え?あんた彼氏じゃないの?
なら、なにもの?」
わたしは、
ウサギ男も、
岩田くんも
朴さんの子供も、
ほしくはない。
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