第1章

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「まだ挿入してなかったか」 この状況においては、救世主であるはずの山本ケイタ、 その口からは、兎男と同様のゲスな言葉が出てきた。 「誰だよ?」 まだ、背中が痛いのか、ゆっくりと魚男の方を振り返る兎男。 「おれ?ご近所さんだよ」 言い方へん 「凛々子の男か?」 「残念ながら。 ただ、いつものように姉妹の部屋覗いてたら、強制ワイセツの現場見ちゃって」 「覗き~?」 こいつも、犯罪者だよ。 「わずかな正義感持って訪ねてきちゃったよ、 ねえ、まだ、それ決行しちゃいますか?」 「持ってきてたのは回覧板じゃねえのかよ?!」 だけど、 けして、私に危害は加えない。 「遠目だけど、あんたがここに至るまでの記録もちゃんと残してるから、早くここから消えたほうがいいっすよ、 姉がダメだから妹に乗り換えるってのも超カッコ悪いし」 「うるせー!」 スマホをちらつかせた山本ケイタに、 「あっ……て!!」 一発、肘鉄を食らわしてから 部屋を逃げるように出て行った兎男、 「覚えてろよ!」 と、定番の負け犬の捨て台詞を吐いて、 私を、 ううん、 山本ケイタと私を笑わせていた。 「……あ、ありかと」
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