第1章

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「あいつ、またくるんじゃないの?」 「もう、玄関 開けないよ」 兎男が出ていき、車の発進音が聞こえると、 笑いが消えて、ホッとしたのか、少し目頭が熱くなった。 それを見られないように、少し散らかった玄関を片付け始めた私。 「ストーカーになりかねーな」 「ストーカーするなら凛々子にすればいいのに」 ケイタが言ったように、 凛々子にフラれたからと、私にしつこくするのは、自分に自信がなくて、 私程度なら何とかなるって言う失礼な理由からだと思う。 「凛々子には、ちょっと悪そうな彼氏いるからじゃね?」 ″とうぞ″ とか言ってないのに、勝手にリビングでくつろぎだした山本ケイタは、 狭い一室をキョロキョロしている。 「悪そう?岸島さんが?」 イケメンで紳士的なのに? 「俺からしたら、あの若さで建設会社社長してるなんて、ヤクザにしか見えない」 「建設業=ヤクザなんて古い考えじゃない」 この人、覗き程度でどごまで知ってるんだろう? 「このタンス、下着入れ?」 「はっ!?ちょっと、なに触ってんの?」 人んちのタンス勝手に開けようとする厚かましさは、生まれ持ったものだろうか? 「凛々子の下着、見てみたい」 「……」 だいたい、そもそも、こいつ、本当にたまたま家を覗いてたの? 「ね」 「ん?」 干してある洗濯物を、凝視する山本ケイタ。 この人の本質や真意が全く見えない。 「ホントにスマホであいつが部屋に入るところ撮ってたの?」 「正確には、あいつが来る前から撮影してた」 「見せて」 「…………いいけど怒るなよ?」 「見せて!」 なんか嫌な予感がして、 アルバムの中の動画をクリックすると、 「あ″っ」
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