第1章

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「ほら、今年は終業式の日がクリスマスイブだろ? 最悪、みんな泊まればいいって。 かーちゃんが!!」 「……」 ようやく俺に向き直った冴島の眉間に、深い深いシワが刻まれている。 「羽村、相当楽しみにしてたからなぁ! まー、はしゃぎ疲れて寝たら、風邪ひかないように俺がちゃんと布団かけといてやるから。 じゃ、社会人はお仕事頑張って!!」 眼光鋭く俺を睨みつける瞳に、イヤミをひとつ。 ニカッと満面の笑みを返しながら片手を挙げて、理科準備室を後にする。 今度は俺が、冴島を振り返らずに。 ダンッ、ドアの締まる音を後ろ手に聞き、ニヤリ。 思わず笑が漏れる。 ───よし、これで冴島、確実にうちに来るな。 してやったり! 小さくガッツポーズをしながら、すっかり日の落ちた廊下を歩く。
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