十 西利太の村下

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 (やかた)を出た和仁(わに)たちは騎乗し、布都斯(ふつし)たちに見送られて屋敷を出た。  爾多郷(ぬたのさと)宍道湖(しんじこ)中海(なかうみ)を見おろしながら馬が館から遠ざかると、馬上の和仁の耳元で遠呂智(おろち)の声がした。 『(わし)身罷(みまか)って、西利太(せりた)が村になった・・・。 出雲、隠岐、石見(いわみ)伯岐(ほうき)大倭(やまと)になれば、お前の思惑(おもわく)どおりではないか・・・』 『なっ、なんとっ・・・』 「いや、良かった。良かった。  村下(むらげ)のじゃなかった。村上(むらが)が言っていたとおりになったなあ」  驚いている和仁の横で、馬上の鉄穴衆(かんなしゅう)が喜びを隠さずに言った。 『頭領(かしら)は俺と鉄穴衆の心を読んでいた・・・。  頭は我らの思いを叶えたのだ・・・』  和仁の目に涙が浮んだ。               (大倭1 出雲編① 遠呂智 了)
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