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鉄穴衆の騎馬をひきいて、遠呂智の騎馬が屋敷に駆けこんだ。
「布都殿。もう一度、西利太に来て、鍛冶の指導をしてくれぬか。布都殿が教えてくれたように馬具と農具を作っているが、良い物を作れぬ。もっとじょうぶで長持ちする物を作りたいのじゃ」
遠呂智は鉄穴衆の頭目にすぎず、村上ではない。その遠呂智が、恩ある布都を前にして騎乗したままである。
「お前は儂との誓約を忘れたのか・・・。出雲のみならず石見と伯岐の郷におしつけた農具すべてを持ち帰り、見返りを返すのだ。
今後は先祖の定めを守れ」
笑うように目を細め、布都は穏やかな言葉に強い思いをこめた。
布都の言霊と強い生霊をあび、遠呂智の馬が興奮して前脚を蹴たてた。それを合図に鉄穴衆がいっせいに剣を抜き、馬の脇腹を鐙で蹴った。
「よさぬかっ」
布都が鋭く一喝した。
七騎の鉄穴衆が手綱を引いた。轡を返して遠呂智の背後へ馬をもどしたが、先頭の一騎が剣を右横に構えたまま馬を突進させた。
馬が布都の横を駆けると、馬上の鉄穴衆は布都の首めがけ、剣を力まかせに振った。
布都は瞬時に剣を抜き、襲いかかる剣を叩き落すように切った。
がっ、と音をたて、鉄穴衆の剣が鋒から砕け散った。
鉄穴衆はあわてて手綱を引いた。馬の進路を変えようとしている。
「捕らえろっ」
叫びながら布都斯が馬の轡に跳びついた。馬は布都斯を中心に孤を描いて向きを変えている。
騎馬に蹈鞴衆が襲いかかった。
馬上の鉄穴衆は剣を振りまわしたが、折れた剣は蹈鞴衆にとどかない。鐙にかけた両足をつかまれ、鞍からひき降ろされて捕らえられてしまった。
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