78人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの家からだっ。かかれっ」
馬を走らせながら、和仁が大足春の家に剣をむけた。
村の家々は丸太と柴の骨組みに茅を葺いた、簡素な造りである。屋根の正面と裏手に煙抜きがあり、それぞれの上部に五本の丸太を藤蔓で結束した、家の要がある。
八騎が家に近づいた。先頭の鉄穴衆が鞍から腰を浮かせ、鐙に立って剣を振りあげた。そのまま速度をあげ、大足春の前に馬を走らせてきた。駆け抜けざまに丸太の藤蔓を断ち切るつもりだ。
騎馬が大足春の前に迫った。大足春は入口に隠し持っている鋤で、駆けてきた馬の前脚を力まかせに薙いだ。
骨が折れる鈍い音が響き、凄まじい嘶きをあげて、馬が首から地面へ雪崩れ落ちた。騎手の鉄穴衆は大きく前方へ投げだされたが、運よく一回転して、ゆっくり尻持ちするように足から尻へと地面に落ちた。
「このやろうっ。俺の馬をつぶしやがってっ」
怒りで顔を真っ赤にして鉄穴衆が立ちあがった。ふりむきざまに剣を大きく振り、大足春の腹に切りつけた。
だが、大足春は身構えていた。腹へ走る剣より一瞬早く大足春の鋤が風を切り、鈍い音をたてて銑物の兜が砕け散った。
立ちあがりざまの横っ面を鋤で打たれ、鉄穴衆はのけぞり、そのまま気を失った。
「春来を殺めやがって、許さねえっ」
倒れた鉄穴衆を睨んだまま、大足春は大きく息を吐いた。
他の鉄穴衆たちは、仲間が大足春を打ちのめしたら、馬をつぶされた落ち度をからかってやろう、と思ってにたにた笑いながら見ていたが、仲間が大足春に打ちのめされると、血相を変えた。騎馬の包囲網をいっきに狭め、家の側面へ大足春を追いつめて、いっせいに罵声をあびせはじめた。
最初のコメントを投稿しよう!