十 西利太の村下

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西利太(せりた)が村になれば木次郷(きすきのさと)に加えられ、俺と下春(したはる)の指導を受けるのだぞ。それで良いのか」  布都斯(ふつし)が見下したように和仁(わに)を見ている。 「承知している」  この布都斯の態度も見せかけにすぎぬ、と和仁は感じた。腹の中で西利太(せりた)を村と認め、さらに、何かを探ろうとしているのである。 「誰が鉄穴衆(かんなしゅう)をまとめるのだ」  やはり、わかりきったことを聞き、鉄穴衆の意向を確かめる気だ。 「俺が皆から、鉄穴衆の村上(むらが)になってくれ、と頼まれた」 「そうだっ。和仁が村上だっ」  和仁の背後から鉄穴衆の声があがった。 「村の衆として、皆、定めに従うのだな」 「従うっ」  布都斯の問いに鉄穴衆が口々に言った。皆、迷いのない目をしている。 「ならば、西利太を木次郷に組み入れるよう、上議(かむはか)りにかけよう。  弔いはいつだ」 「今日、これからだ」 「では、明日の昼、爾多(ぬた)(やかた)に来てくれ。上議(かむはか)りの結果を伝える」 「承知した・・・」  布都斯と下春が立ちあがった。三人の遺体に一礼し、広場へ降りた。 『我らは蹈鞴衆(たたらしゅう)に従い、定めに従う、と言っているのだ。西利太を村として扱うのに、今さら何を決める。これも見せかけか・・・』 布都斯たちを見送りながら、和仁は思った。
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