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「西利太が村になれば木次郷に加えられ、俺と下春の指導を受けるのだぞ。それで良いのか」
布都斯が見下したように和仁を見ている。
「承知している」
この布都斯の態度も見せかけにすぎぬ、と和仁は感じた。腹の中で西利太を村と認め、さらに、何かを探ろうとしているのである。
「誰が鉄穴衆をまとめるのだ」
やはり、わかりきったことを聞き、鉄穴衆の意向を確かめる気だ。
「俺が皆から、鉄穴衆の村上になってくれ、と頼まれた」
「そうだっ。和仁が村上だっ」
和仁の背後から鉄穴衆の声があがった。
「村の衆として、皆、定めに従うのだな」
「従うっ」
布都斯の問いに鉄穴衆が口々に言った。皆、迷いのない目をしている。
「ならば、西利太を木次郷に組み入れるよう、上議りにかけよう。
弔いはいつだ」
「今日、これからだ」
「では、明日の昼、爾多の館に来てくれ。上議りの結果を伝える」
「承知した・・・」
布都斯と下春が立ちあがった。三人の遺体に一礼し、広場へ降りた。
『我らは蹈鞴衆に従い、定めに従う、と言っているのだ。西利太を村として扱うのに、今さら何を決める。これも見せかけか・・・』
布都斯たちを見送りながら、和仁は思った。
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