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昼前。
青幡村にもどった布都斯と下春は、稲と佐久佐比古をともなって宍道湖の南岸に馬を走らせ、爾多郷の布都の館へむかった。
午後。
布都の館館の広間に、布都斯と下春、稲、佐久佐比古、布都、乾那有、尾羽張、布都の家族と、布都に仕える蹈鞴衆が集まった。
夕刻まで上議りが行われ、西利太を村にして木次郷に組み入れ、鉄穴衆を蹈鞴衆の配下にすることが正式に決まった。
「これで、すべてが決まった・・・。
今後は布都斯が蹈鞴衆の総村上を務めよ。村上のお前たちで出雲、石見、伯岐、隠岐を治め、先祖の思いを遂げるのだ」
「父上っ。隠居するのかっ」
布都斯は驚いた。布都が郷の村上も退くのか、と思った。
「儂が蹈鞴衆の総村上を退くだけだ。儂たちは村上も村下もやめぬ。これまで同様、お前たちを指導してゆく。安心するが良い」
布都が目を細めてそう言った。
「安心したぞ。まだ、父上たちの助けが必要だ・・・。
父上たちが出雲の郷を豊かにしたように民を指導すれば、石見、伯岐、隠岐が出雲と一つにまとまるのはわかる・・・」
布都斯たちが出雲一の豪族と言われた遠呂智を討った。鉄穴衆を蹈鞴衆の配下にし、西利太を木次郷の村にすれば、遠呂智が商いで支配していた石見と伯岐、親しくしていた隠岐の、すべてが蹈鞴衆の支配下になる。このことは他の郷々へ知れ渡り、蹈鞴衆の持つ徳と力を頼って、豪族や郷の衆が集まってくるはずである。
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