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「俺の心を読んで何を知りたいのだ。頭領が討たれたのはすべてが頭領の思惑だと言いたいのか・・・」
「そうは言わぬ・・・。
おそらく遠呂智は先祖が我らに思いを託したのを知り、このままでは先祖の思いを遂げられぬ、と気づいて、みずから身を引いたのだろう」
布都斯は妙なことを言うと和仁は思った。
「ならば、先祖の思惑ではないか」
「そうとも言える・・・。
では、上議りの結果を伝える。
今から西利太を木次郷の村として扱う。
鉄穴衆は今までどおり銑物を作れ。
折をみて剣鍛冶の技を授け、蹈鞴衆に組み入れる。これからは砂鉄と鉱石の商いをやめ、鉄の道具を商え。
和仁は西利太村の村下と鉄穴衆の村上を務め、我らとともに先祖の思いを遂げよ。
いずれは西利太の蹈鞴衆の村上も務めてもらう。
春になったら鉄穴衆と蹈鞴衆で騎馬隊を組織し、政を行う館を建てる。鉄穴衆を訓練し、館の建設に備えておけ。
今後のことはそのつど俺と下春が指示する。それで良いな」
「それでは、遠呂智がしようとした事と同じではないか・・・」
『鋼物は長持ちする。多く出まわればその後の商いは減る。そのうえ、皆が騎馬兵に駆りだされれば、作れる銑物も鋼物も減る。これでは蓄えもできぬ。鉄の道具の商いだけでは、いずれ鉄穴衆は暮らせなくなる。
布都斯は何をする気だ・・・』
和仁は不安になった。
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