紙一重

6/17
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
菅原くんは文房具屋のドアをくぐりました。 一人です。竹内くんは用があるんで一人で帰りました。 菅原くんは、まあまあの広さがある店内を迷いなく進みます。 ここは、菅原くんの通う高校の生徒御用達の文房具屋ですから、どこに何があるのかよくわかっているのです。 ーーやあ、あったあった いつも使う四色ペンを掴んだ菅原くん。 ふと、違和感を覚えて棚の上を見回しました。 ーーあ、なんだこれ。試し書きかな それは真新しい小さなメモ帳でした。 ペラペラとめくってみます。まだ何も書かれていませんでした。 ーー(よし、最初の試し書きをしてやろう) 四色ペンを握った菅原くんがにやりと笑いました。 ーー(何を書こう。名前でも書こうかな) ーー(恥ずかしいかな) ーー(でも、最初だもんな。記念すべき最初だもんな) しばらく考えて、外が薄暗くなってきた頃、ようやく菅原くんはメモ帳の一ページ目に何かを書き始めました。 『はじめまして』 菅原くん的に上出来でした。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!