そらのむこう。

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先生が兎を飼っていたことは、知っていた。 前に、僕を引き取ったのは、昔兎を飼ってたからだって聞いたことがある。 でも、どんな兎だったのかとか、なんて名前だったのか、何も先生は教えてくれなかった。 時々、僕がその兎の生まれ変わりだったらいいのにって思うことがあったけれど、写真の中の兎と僕は似てるようで全く別人(?)だった。 「なっちゃん」 「ふぇ!?」 僕は考え込んだまま、ソファで寝てしまっていたらしい。 電気のついた部屋に、先生が立っている。 「もう、仕事から帰ったら真っ暗だからビックリしたよ」 「ごめんです、寝ちゃってたですー」 ふんわりとした頭で先生の顔を見ると、夢の中でみた暗闇の中の月と同じ感じがした。 母が行った世界の匂い。
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