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来てしまった。
これで仲良くなれればミクと小鳥遊を仲良くさせれる。
…そんなの。
そんなの嘘だ。
ただ、私が。
小鳥遊の秘密を知りたいだけ。
「うん!もう仕方ない!ごめん、ミク」
これは開き直ったほうがいい 。
ごめんね、ミク。
うん。
「大きい声だね。椎名さん」
「はえ?!!!あ…小鳥遊か」
「うん。どうぞ入って」
小鳥遊は工芸室のドアを開けて私を中に通した。
そして、工芸室中にあるもう一つのドアの方に行った。
「え、ちょ…小鳥遊?
そこって入っちゃだめなとこじゃないの?」
「僕はいいの。先生から鍵もらってるから」
「え?いいの?やばい」
「なにがやばいの?」
ふっと笑ってポケットから鍵を出した。
一つ。小鳥遊の秘密を知った。
あーだめだ。
これ以上知っちゃだめなやつ。
「あ…小鳥遊!」
「ん?」
「ごめん!今日帰らなきゃ!」
「え、なんで?いいじゃん。
少しだけ。お願い。少しだけだから」
「……」
こんなに、だめだって思ってんのに。
小鳥遊のお願いを無視することはできなかった。
無理だった。
「そこ座って」
ウキウキしながら小鳥遊は私に椅子を進める。
そこは一つの小さな部屋みたいになってて。
椅子が2つ。
ガスコンロもあって。
カップとか茶っぱとかお菓子とか。
いろんなものがあった。
「小鳥遊…ここに住んでるみたい」
「たまに寝ちゃっていつの間にか朝になってることあるよ」
「えぇ?!学校に泊まるとかこわくないの?」
「うん、ここだれもこないし」
ガスコンロにやかんを置いてお湯を沸かす。
ココアを入れてくれた。
甘い香りがする。
「ココア好き?」
「すき!」
はいとカップを渡された。
静まり返った部屋のなか。
私は、少し緊張してた。
「ね、ね!小鳥遊!用事があるからさはやくしてくれる?」
「うん、ごめんね引き止めて」
そう言って、机の下にあるものを取り出した。
それは、たぶん。
バイオリン。
「え?バイオリン?」
「そう。バイオリン」
箱から取り出して、小鳥遊はそのバイオリンに触れながら。
とても、柔らかい笑顔を見せた。
「僕ね、バイオリニストになるのが夢なんだ」
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