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私は、走った。
思いっきり。
傘なんて、コンビニに忘れた。
雨に濡れながら。
家までずっと。
止まらないで。
「はぁ・・・はぁ・・・」
家に着き、玄関で息を整える。
お母さんはいない。
たぶんまだ仕事だ。
保育士をしている。
びしょびしょの制服のまま。
玄関に立ちつくしていた。
人が殴られているのをはじめてみた。
しかも、あんなに思いっきり。
「やだ・・・震えてる?」
寒いからだ。
雨に濡れて寒いから。
「お母さん・・・っ!」
殴られてる人の恐怖の顔。
殴っている人の歓喜の顔。
その両方が脳裏に焼き付いて。
苦しい。
黒瀬君の顔が。
あの男と重なって。
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