始まりの

6/7
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
私は、走った。 思いっきり。 傘なんて、コンビニに忘れた。 雨に濡れながら。 家までずっと。 止まらないで。 「はぁ・・・はぁ・・・」 家に着き、玄関で息を整える。 お母さんはいない。 たぶんまだ仕事だ。 保育士をしている。 びしょびしょの制服のまま。 玄関に立ちつくしていた。 人が殴られているのをはじめてみた。 しかも、あんなに思いっきり。 「やだ・・・震えてる?」 寒いからだ。 雨に濡れて寒いから。 「お母さん・・・っ!」 殴られてる人の恐怖の顔。 殴っている人の歓喜の顔。 その両方が脳裏に焼き付いて。 苦しい。 黒瀬君の顔が。 あの男と重なって。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!