LOT.1 黒江リサ

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 マンションの部屋に入ったところで、スマートフォンが鳴る。「加賀美 涼」からの電話だ。 「お疲れさま。無事に帰ったみたいだな」  仕事の、完了確認の電話だ。 「800万で落札なんて、すごいじゃないか。これでリサも、高額商品の仲間入りだな」 「ねえ……」  私は、スマートフォンに語りかける。 「その800万だけど、落札者に返せないかな」 「どうしてだ? 落札者と、何か問題でもあったのか」 「そうじゃないけど」 「なら、返せるわけないだろう。もう入金処理が完了し、お前の取り分も送金済みだ」  私はため息をついてから、呟く。 「じゃあ、私がもらう分だけでも……」 「リサ」  加賀美 涼が、低い声で私の名を呼ぶ。 「あのときの約束を、忘れたのか」 「いいえ、忘れてないわ」 「あの日、お前は生まれ変わったんだ。それとも、また影に戻りたいのか?」
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