眠り王子。

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並んで歩きながらふと視線を横にずらせば空の青にも負けない海の碧。 うちらの通う高校から5分もしないところにある海岸。 横道にそれて砂浜をローファーで踏みしめるとクックッと独特な音がする。 鳴き砂といえば、島根の琴ヶ浜や隣の井出ヶ浜が有名だけれど、この青谷も負けじと良い音を鳴らす。 見慣れた空の青、海の碧。 聞き慣れたこの音。 いくらでも見たいと思う、 砂浜と同じ色をした凪砂の髪や瞳。 もっと聞きたいと思う、 凪砂の声。 もっと、こっちを見てくれんかな。 もっと、話しかけてくれんかな。 ぼんやりと踏みしめながら凪砂の後を歩いていると、砂に足を取られ尻もちをついてしまった。 一際大きくクッ、と砂が鳴る。 「いたー……」 「なにしてん……」 凪砂が体をゆっくり反転させ歩み寄ると、尻もちをついたままのうちの前にしゃがみ込む。 同じ高さに並んだ薄茶の瞳。
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