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「……こけた」
「……毎日歩いとるとこでこけるなんて。
ほんにだらずだな、さーやは」
やっぱり気だるげに。
差し伸べられた手はうちの手をすり抜けて口元へ。
「なぎ……さ?」
唇をなぞる凪砂の指先。
しゃり、と砂と皮膚が擦れる感触がする。
あぁ、砂を払ってくれてるのか。
ってか口元まで砂が飛ぶってどんだけの勢いだ、うち。
指先が擦れるたびに、体が熱を持つ。
覗きこむように体を傾ける凪砂が近くて。
どうしたらいいかわからん……。
折角目の前に凪砂の顔がや瞳があるのにあたしは視線を落としてネクタイの結び目をにらむように見た。
凪砂の視線の先はうちの口元に注がれている。
ばくん、ばくん、
心臓がたまらなくやかましい。
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