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「なーぁ、何ー……?」
答えようとしない凪砂に重ねて質問をする。
ちらり、とまぶたを軽く持ち上げると、さっきまで凝視していたネクタイと同じうちネクタイをくん、と引っ張る凪砂。
重心の崩れたうちの手元でクッと砂が鳴る。
潮の香りに混ざって香る凪砂の香り。
間近にあるほのかに揺らめく薄茶の瞳。
唇にかかる、吐息。
触れないギリギリの距離に詰められた凪砂の顔。
「……これで、わかるが?」
ほんの少し口角を持ち上げて凪砂が不敵に微笑む。
うちの心臓は今にも壊れそうだっていうのに。
そのまま凪砂はネクタイを引っ張る力を緩めると、またまぶたを閉じた。
これで、って…………。
これでって………………!
熱い頬、高鳴る心臓、
うちの全てに反するのは安らかな寝息。
…………ほんに寝てるかどうかは怪しいっちゃけど。
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