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幸い今日は現国の授業がない日だから、夏井と顔を合わせることはなかった。
廊下の先で女子生徒に囲まれている長身を見かけたから、入りたくもなかったけどトイレに逃げた。
一応習慣で便器の前に立つけど、やっぱり出ない。
「………」
あいつは涼しい顔で笑っていた。
俺のことなんて忘れた顔で。
大人の余裕かよ…って、俺のことにも気がついてないんだから当然なんだろうけどさ。
こっちばっかり気にして、癪に障る。
俺だって気にしてなんかいない。
あんなの、ちょっと体が傾いただけの事故だろ?
本当にキスされたわけでもないのに、何意識してんだ、俺。
気にしなけりゃいいんだろ。
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