第2章

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夏井は笑みを噛み殺すような顔をした。 …やっぱり、試してやがったか。 心臓が締め付けられて、カッと頭が熱くなる。 …いやいや、冷静になれ俺。 キッと正面から睨んで、パイプ椅子に乱暴に座ると、お互い昨日のことには何も触れずに補講は開始された。 出されたプリントを黙々と解いていく。 長く続く沈黙が重苦しい。 静かすぎて、呼吸の音も伝わるくらい。 これは自惚れじゃなくて、隣の視線を強く感じる。頬が痛い気がするほど。 チラっと盗み見たら真剣な表情で俺の顔を見てやがるから、顔自体を背けて視線を遮断した。 体がじっとりと汗ばんでくる。 夏井の目は、心臓に悪い。
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