第3章

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奢ると言われたけど、流石に自分の映画代くらいは自分で出した。 「出してもらっちゃうといい感想しか言えなくなるだろっ。映画くらいは自分の感性で自分で好きに見たい」 そう宣言すると、夏井は「やっぱりお前の着眼点は面白いな」と変に感心された。 嬉しくないけど。 強引に決められたのは癪に障るけど、正直凄く見たかった映画だし評判もいいと小耳に聞いていたので俺は楽しみに席についた。 あれだけの量を食べたのにまだ食べられるかと呆れられたけど、これは別腹だとポップコーンを片手に。 流石にサイズは小さめだけど。 公開日からしばらく経っていたせいか席はまばらだ。 右隣に夏井がいるっていうこと以外は、俺にとって凄くいい休日かもしれない。 「先にトイレに行って来る」 と夏井が席を立って、ようやく俺の呼吸が楽になった気がした。 今日はこれまで、何事もなかったみたいに過ごしているけど、なんだかんだ無意識に気を張っていたのかも。 気疲れで肩が凝っている。
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