第3章

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目線を前に向けたまま膝に置いていたポップコーンをもぐもぐしていると、夏井も俺の膝に手を伸ばして数粒持っていって口にしていた。 いつもなら何生徒から巻き上げてるんだよ、くらい言ってたかもしれないけど、映画に集中していたから無意識に夏井も手を伸ばしやすいように右側の膝に載せた。 いいところに差し掛かった映像はスピード感があって、一瞬も目を離せない。 こういう大きなスクリーンの映画を見ると、意識がそっちに集中してしまい他のことがおろそかになってしまう癖が俺にはある。 まさしく意識が散漫になっていた手がポップコーンのカップの中に突っ込まれたままになっていたようで、夏井の左手がうっかり俺の手に触れた。 ……んだと思った。 だけどそれは違ったんだ。 夏井への意識などほぼない状態で手を引っ込めようとしたら、ぐっとその手を掴まれた。 咄嗟に反応できずにいた間に。 俺の塩っぽい手に、夏井の指が絡んでいた……。
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