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油断していた俺は、ドキっと肩を揺らした。
「…っ、おぃ…っ!」
抗議して手を振りほどこうとするが、夏井はしれっとした顔でスクリーンを向いたまま俺の指を離そうとしない。
ごそごそと動いてはっきりと怒鳴ろうとしたところで、「ゴホンッ」というわざとらしい咳払いが近くの座席から聞こえて、声を潜めた。
「何やってんだお前…っ」
「…映画はいい所だぞ」
夏井は指を強く握り、その指を…あろうことか、舐めた。
「……っ!!」
言葉を失った俺に、夏井がこちらを向いた。
暗い闇に、細められた目が悪戯っぽく光る。
「しょっぱい」
「~~あんた…っ!!」
信じられない行動に、俺は思わず声を荒げて席を立ち上がろうとした。
「シーッ!」
今度は確実に注意され、マナーを破ることにも抵抗はあるから大人しくする。
…その分、俺の行き場の塞がれたイライラが募る。
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