第3章

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映画なんてとても見ていられなかった。 迫力のある腹に響くほどの音のはずなのに、耳から抜けていく。 ぎゅっと目を瞑って、俺を襲ってくる妙な感覚を逃そうと努力するのに…それは無駄なものでしかない。 夏井も映画なんて見ちゃいなかった。 映像の光に反射してキラリと光るその目は、俺を金縛りさせる。 …なんで。 なんで。 なんで。 なんでこんなことするんだよ…。 お前、何がしたいんだよ。 俺をどうしたいんだよ。 こんな…こんな。 なんて…エロい…。 自分でも顔が熱いのが分かる。 明るい場所で見ればきっと真っ赤になってるはず。 息が上がってきそうになる。 たったこれだけのことなのに。 さっきは認めたくなくて意思だけでなんとかなったものが、再び込みあがってくる。 直接的な刺激でもないのに、なんで…っ。
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