第3章

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左通路に近い席だったから俺の方は並びに人はいないけど、夏井の3つか4つ向こうには人がいる。 斜め後ろの座席にも。 まばらとは言え、人が見れば今俺たちがどんなことになってるかバレてしまう…。 公共の場でこんなことをしてくるお前が悪い! と睨むけど、夏井は「勝手にこんなにしたのは、お前だ」と俺の考えを読んだように返してくる。 だーっ!  ったくお前は本当にエスパーかなんかかっ!! だったら分かんだろ、俺が今…どんだけのっぴきならない状態か…!! しかもあんた今現在それを撫でたり強弱つけてにぎにぎしたりしてんだから、一目瞭然だろーが…!! 「や…め…っ」 「そういうこと言うの、逆効果って覚えておいたほうがいいぞ」 「何言っ…んっ」 映画はクライマックスとも言える大音量で、幸い俺の声が迷惑をかけてることはなさそうだけど…。 言葉がしっかり繋がらないくらい、俺の呼吸が荒くなる。
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