第3章

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流石に周囲がざわざわしてきたので、映画が終わったことに気が付いてトイレを出た。 一瞬目が合った男がやけにジロジロ見てきた気がした。 ───何あいつ、映画館の中で男とイチャついてたヤツじゃん。 驚いて立ちすくむけど、男は俺なんて興味なさそうにスマホを見ていた。 気のせい……か? おいおい……幻聴まで聞こえてくる始末かよ。 ヨロヨロと生気(この場合、精気?)を吸い取られたような状況の俺がトイレを出ると、夏井が長い足を軽く組んで壁にもたれてまっている姿が見えた。 近くを通った女性2人組が「あの人、かっこいい~」と色めいて夏井のことを見て話している。 …そうなんだよな。 腹が立つほど、色男なんだよ。 甘くはないけど、クールな美形。 絶対、女にだって不自由してないはずなんだよ。 気まぐれで男に…それも生徒にちょっかい出してくるなんて。 あの人変態教師なんですよ、と何も知らないその女達に言ってやりたい衝動にかられる。 フと夏井が俺に気が付いて、ニヤリと笑う。 ほら…変態の顔してんじゃん…。
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