第二章

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「じゃ、小夜、速野君に厩舎をみせてやってくれ」桜木調教師が言う。 「うん。わかった。一通り見せるだけでいい?」小夜は彼女の父親に向かって言う。「じゃ、速野さん、付いてきてください」彼女は速野にその後向き直り言った。 「ありがとう、小夜さん」 小夜はそのまま悠馬を連れ、事務所を出る。 「今の時期は結構入厩している馬が多いですね。」長めの黒髪を結わえた彼女が言う。「クラシック目指せるのも、二、三頭います」 「よくトーナンレジェンドは話題になっていますね」 「ええ、はい。」彼女はドアから黒い顔が覗く馬房の仕切りの一つにに寄った。「これが、トーナンレジェンドです」 「イケメンだな」それが速野のトーナンレジェンドに対する率直な感想だった。 「はい、よく言われます」小夜は得意げに言った。 その時、2人の背後を厩務員によって引かれた特徴的なマーキングの鹿毛が通った。 「あ、マカデミアナッツ」 「へ?」 「はい?」厩務員までもが悠馬の唐突な発言に足を止めた。 「20××生まれのクロフネ産駒。母の名はマカデミアンオイル母の父サドラーズウェルズ」 鹿毛が首を曲げ、悠馬を見た。 厩務員が硬直した。そして驚愕しきった声で言った。 「は、い。この馬は20××年生まれのクロフネ×マカデミアンオイル、父サドラーズウェルズのマカデミアナッツ号です」 「やっぱり。」悠馬は微笑んだ。「昔、良く遊んでいましたよ、彼と」悠馬はマカデミアナッツの首筋を撫でた。 マカデミアナッツは、少し嬉しそうに悠馬の髪を突いた。久しぶり、と言うかのように。
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