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第二章
悠馬が初めて桜木厩舎に現れたのは彼が中学の卒業式を迎える前、桜木調教師に挨拶に来た時だ。
「速野君だね。」
「はい。これからお世話になります」
悠馬は付き添いで来ていた父親と共に事務所に入り、上記の会話を交わし、握手した。
「息子をよろしくお願いします。くれぐれも、お気を付けて。」
「こちらこそ」
両者からドス黒いオーラが溢れているのを見た悠馬は体の向きを変え、ドアから覗き込んでいる少女の姿を認めた。先程まで勇作と硬い、そして痛い握手を交わしていた桜木雅紀も彼女に気が付いた。
「小夜、どうしたの?」
「とうさん、その人、若い騎手の人?」
雅紀が頷くと、彼女は悠馬の方へ向き直った。
「こんにちは。桜木先生の娘の桜木小夜です」中学二年生ぐらいの彼女は礼をし、言った。
「彼女、ジョッキールームでバレットみたいなことをやってるみたいなんですよー」雅紀は内心認めていないのか、顔を顰めながら言った。
「初めまして。速野悠馬です。」悠馬はきっちり礼をし言い、微笑む。「よろしくお願いします」
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