渡り鳥に止まり木を

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 じりじりと暑い光が俺に向かって照り付けられていた。流れる汗は衣服とくっつき、不快感しかない。頭には笠をつけてはいるが、気休めぐらいのものだ。効力があるのかは定かではなかった。 「くそっ!! 暑い!!」  不服を口に出すが、それは独り言にしかならない。その相手が太陽なのだから、無駄なことは重々承知していた。  進む足を止め、肩に担いでいた麻袋から、茶色い革で出来た丸い水筒を取り出した。軽く振ってみたが、その返事は小さい。解っていたことではあった。もう食料も水も底をついている。それでも、俺は水筒の紐を解き、口に当てるとそれを絞るように水を求めた。 「……よし!!」  口に入ったのは数滴の水だったが、それ充分だった。俺は完全に空になった水筒を乱雑に麻袋に入れると、それを担ぎ、歩き出す。  目の前には長いゆるりとした坂が延びているが、それを登りきると村があるはずだ。  俺が目的としている村だ。
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