渡り鳥に止まり木を

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 俺の生業は用心棒だ。今まで、様々な場所で様々な人や物を護ってきた。様々な場所、というのは俺自身が転々と移動してきたからだ。  一つの場所に固執しなかったのは、理由は特にはない。依頼主に雇い続ける金がなかったこともあったし、依頼主に嫌われることもあった。    だが、何よりも俺自身が同じ風景を嫌ったのかもしれない。    腕には自信がある、あらゆる武器も使える。そういったことが得意なのだから、このような生きる道しかなかった。望んだ道ではない。だが、これしかなかったのだ。  選択肢が一つしかない道を選び、それで生きてきた。望まない道で生きるのは惰性で動くようなものだ。働かなければ生きていけないのだから、働く。何故、生きたいのかは定かではないけれど。  しかし、惰性で生きるのは疲れるものだ。だから、場所を転々とした。この道で生きるにしても、見える風景が変われば多少の気分転換にはなる。  そして、今回たどり着いたのがこの村だ。 「何だ? 何だ?」 「誰だ、あれ?」 「坊主頭に武道着……旅の方かしら?」  続々と村の者達が興味を持って集まってきた。後は、俺の実力を見せつけてやれば、自然と仕事は舞い込むだろう。上手くいけば、長の護衛なんかも……。  そう思っていたし、確信していた。それなのに――。
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