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「何だってんだ!! 俺がやっているのは芸じゃあないぞ!!」
怒りに任せて叫んだ。周囲の村人の傾けていた首が反対方向へと再び傾く。
おそらく、俺が何を怒っているのか解らないのだろう。
「俺はここに仕事を求めに来たんだ!! イノシシでも熊でも俺が倒してやる!!」
その言葉は自分の実力を示したものだった。少しは驚くものだと思ったが、周囲の反応はこれまた俺の想像したものとは違うものだ。
全員が、全くの無反応である。
「な、何だ!! 嘘だと思っているのか? 俺はこれまで様々な人を護ってきたんだ!! そ、そうだ!! 何だったら、ここの長に娘がいるだろう? そいつを護ってやってもいい!!」
その発言の直後だった。
場は大爆笑に包まれた。俺を馬鹿にしている――のではなく、本当に心から屈託なく笑っている。
「な、なんだよ。何が、可笑しいんだよ……」
想像外の状況に俺は混乱し、恐怖すら感じていた。
その時だった。
「どうしたのー? 何をしてるのー?」
明るい、大きな声が聞こえてきたのは。
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