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「タイムリープしてるんだ、僕。一回目は七時十五分、雪は通り魔に刺されて死んだ。二回目は八時半、雪は自宅で鋏が突き刺さって死んだ。三回目は十一時過ぎ、雪はうちに泊まったんだけど、トイレに行ったときに放火で死んだ」
抱きしめながら言った。
だから、雪は抱きしめられながら応える。
「それは、えっと、冗談……じゃないんだよね?」
「ああ……冗談なんかじゃないさ。本当に死んだんだ。三回も、守れなかった――ッ!!」
「……それは、君のせいなんかじゃないよ」
慰められた。
悔しかった。
天才だなんだと持て囃されても結局、僕はこの程度で、幼馴染み一人守ることが出来ないんだと思い知らされた気分になった。
「……ああっ! こんなことしてる場合じゃないっ! 逃げないとっ!」
「逃げるって……どこにだよ」
「どこって、そんなもんはどこだっていい。どこか安全な場所にっ! 早くっ!」
着の身着のまま、雪の手を取って家を飛び出した。
「ちょっ、晴! そんなに慌てたらむしろ危険なんじゃないのかいっ?」
そんな雪の言葉に少しスピードを落とした。
――目の前にランナーが居た。
即座に蹴り倒した。
「えっ!? 晴っ?」
驚く雪を横目に再び駆け出す。
「あいつが一回目の通り魔なんだよ!」
「そ……そうなんだ」
三分程全力疾走して、スピードを緩めた。
ふと、隣の雪を見ると、影がかかっていた。
まるで、雪の上に何かが迫っているかのように。
「はあっ、はあっ、雪? どうし――」
一瞬。
ほんの一瞬で僕の目の前から雪の姿が消えた。
恐る恐る下を見れば、雪が鉄骨の下敷きになっていた。
「雪っ!」
「晴……だから慌て、たら危ないと言っただろう……次、は上手……くやってくれよ」
四回目は、鉄骨の下敷きだった。
****
五回目は、階段から滑り落ちて死んだ。
六回目は、バイクに轢かれて死んだ。
七回目は、看板が落ちてきて死んだ。
八回目は、津波に巻き込まれて死んだ。
九回目は、地震で割れた硝子が刺さって死んだ。
十回目は、土手から転がり落ちて死んだ。
十一回目、十二回目、十三回目、十四回目、十五回目、二十回目、三十回目、四十回目、五十回目、百回目、二百回目、三百回目、四百回目、五百回目、六百回目、七百回目、八百回目、九百回目――
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