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「大……切……?」
「ああ。だから死なないでくれ。いや、だから死なせない、絶対に。僕がずっと守るから」
「ははっ、なにそれ、プロポーズかい?」
「だったら笑えるな。彼氏は僕より強い男にしろよ。雪を死なせるような奴は僕は認めないからな」
「君は私の父親かなにかなのかい?」
「――幼馴染みだよ」
「そりゃ、そうなんだろうけれど……鈍感」
「は?」
「はぁあ、なんで気づかないかなぁ……。私の本命は君なんだよ?」
そう、突然、今までにない台詞を言った雪の声は、少し上擦っているような気がした。
「あー……、えっと、それ、冗談じゃないんだよな?」
「勿論だよ。大好きだよ――晴」
瞬間、なにか光るものが見えて、バットを振った。
鈍い音と共に、雪原をなにか、恐らく航空機のパーツが転がる。
「ねえ」
再びの呼び掛け。
「なに?」
「私は、なんで狙われてるんだろうな」
「さぁな……今日死ぬ人の数でも決まってるんじゃねぇの?」
そんなこと、一々考えてる暇なんてなかった。
「じゃあ、今日が終われば、私は逃げなくてもいいのかな?」
「一生、追われ続ける可能性も微粒子レベルで存在すると思う。いや、ぶっちゃけ、半々だな」
「だね……君の論だと、誰か――今日死ぬはずではなかった人が死ねば、私は逃れられる可能性も微粒子レベルで存在するって感じだろうね」
はっ、となった。
その発想がなかった。
戦闘能力が上がるばかりで、なんとかこれから逃れる術を考えるということをしなかった。
全部回避すればいいとか愚直なことを思っていた。
そして、僕は――
――ナイフで自分の心臓を刺した。
「――え?」
雪の驚愕の声が闇夜に響く。
「おいおいおいおい、なにやってるんだよ! 晴っ! 晴っ……! なんで――っ!」
「はは……僕が死、ねば、雪は安……全に生きてい、けるのかなって思っ――」
血が逆流してきた。
口から鮮血が吐き出される。
「そんな……そんなの、望んでないっ! 君の命と引き換えに生きるくらいなら、死んだ方が――」
「言うなよ。もう、雪は九百九十……八回死んでるんだ。一回くらい、僕が死ん、だっていいだろ……」
「嫌だよっ! そんなの嫌だっ! 私はまだ何千何万死んだっていいから! 私を一人にしないでくれよ……」
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