不機嫌な雪

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 ポツリ。  と。  大粒の涙が、僕の頬に落ちた。 「泣くなよ……。ああ、そういや、彼、氏はどうなったんだ? 僕のこ、とが好きだったんだろ?」 「……あんなの嘘だよ……。少しは妬いてくれるかと思って……っ! なんでだよっ! 私もっと君の近くにいるからっ! ずっと側にいて守ってくれよっ!」 「はは、そりゃ無理な、相談だぜ。もう、もたねぇ」 「そんなこと言うなよっ! 止めてくれよ……頼むから……」 「追って来るなよ? 大好きだぜ――雪。また、な」  本当に雪のことが好きなのかどうかはよく分からないところだったけど、そんな言葉を告げて、僕は瞼を閉じた。   ****  雪は僕のことが好きだったらしい。  僕だって雪のことは嫌いじゃない。  少々、憎たらしいところもあるが、それも全部照れ隠しだったと思えば、今までの雪が遥かに可愛く見える。  ああ、やっぱり好きなのかも知れなかった。  恋愛、というものに疎い僕だけれど、雪の告白は心にくるものがあったし、それにどこか、高揚した。  しかし、もうそれを告げることは叶わない。  というところで、僕の瞳に光が飛び込んできた。 「……え?」 「……戻った」 「……雪」 「晴? 晴っ!」  雪に抱きしめられた。  こんなのは生まれて初めてだ。  僕がタイムリープしたときの雪の心境は毎回こんな感じだったのだろうか。  しかし、今回は雪にも記憶が残っている。  つまりどういうことだ? 「死んだら、発動?」 「そういうこと……なのかな?」  そんなことなら早く僕が死んでおけば、対処がもっと楽になったのに。 「まあ、とりあえず、逃げようか」 「うん。雪、次死んだら、殺すからね」 「天才は死人を殺せるのか。すげえな」  相も変わらず軽口ばかり。  家を飛び出し、ランナーを探したが見当たらなかった。 「ん……? ちょっと早かったのかな?」 「わかんね……とりあえず進もう」  手を握り、夜の住宅街を駆ける僕と雪。  新しい思い出を背負って、駆ける。 「ここも……無し、か」 「終わった……?」 「いや、こういうこともあるだろ」 「そうだね」  気を抜かず、繁華街へ。  難なく通過し、住宅街。 「これは、本当に……終わったのか……?」 「やったね……ありがとう、晴」
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