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十二月十四日。
窓の外は曇天。
鼠色の空は不機嫌な君を表しているようで、少し笑えた。
雪。
そんな鼠色から降り注ぎ、地面を白く染める様は、誰かの怒りを買ったときに白々しい態度を取る君にそっくりだった。
「何を笑っているのかな?」
長い黒髪を揺らし、覗き込むように僕を見る。
そのまま言えば間違いなく殴られるだろうから、僕はクールにこう言った。
「ん、別に」
ガンっと後頭部に衝撃。
結局痛い思いをする運命だったらしい。
スクールバッグを振り切った姿勢のままジト目で僕を睨む君――冬木雪は、いつにも増して憎たらしかった。
「痛ってぇな。なにすんだよ」
「ん、別に」
口を尖らせてそう言う雪。
子供っぽい仕返しだぜ、やれやれ。
「そんなんだから彼氏に振られんだろ?」
返事は蹴りで返ってきた。
「暴力女め……。親しき中にも礼儀あり、だぜ。愚痴を聞いてやってるだけ有り難く思えよ」
「はんっ! 誰も聞いてなんて言ってないんだけれどね」
「なにそれツンデレ?」
「……これがツンデレなら、世の中ツンデレで溢れてるだろうさ」
「はぁ……嫌な世の中になったもんだな」
「おいおい、私をツンデレにしたまま話を進めないでくれよ」
ははっ、と渇いた笑いが部屋を包む。
「つまんね」
「それには同意せざるを得ないね」
はあ、と本日何度目かのため息を吐き、僕はベッドに転がった。
ぼーっ、と。
何の意味もなく天井を見つめる。
「勉強、しないのかい?」
「勉強ってする必要あんの?」
僕も雪も、という意味を込めたつもりの台詞だったが、どうやら伝わらなかったようだ。
「流石だね」
苦笑しつつ、スラスラとシャーペンを走らせる雪。
考えてる様子はない。
「雪もする必要ないだろ」
「ん、まあ、一応だよ。よく言うだろう? 十で神童、十五で才子、二十過ぎればただの人ってさ」
「あー、まあ、聞いたことはあるな」
しかしよくは言わねぇよ、別に。
「十七で天才のままなんだ。心配する必要ないだろ」
「ま、正直に言えば――暇つぶし、だよ」
「ぶっちゃけたな」
「そりゃあね。こんなものやったところで少しの足しにもならないのは事実だから」
言いつつも、問題集を捲る。
帰宅中に買ったもののはずだが……もう終わりかけだった。
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