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若干の興味からなのか、テレビに視線を向けるが、本心からなのかどうか、正直自分でも分からなかった。そもそも、危険ドラッグの規制が甘すぎるんだ。全面廃止にはできないのだろうか。そんな疑問を抱きつつ、食事をすすめる。
「言ったわりにのんびりなのね?」
背後から母の声がした。完全に気が緩んでいた。時計に目をやると、針はすでに八時指していた。俺は慌てて食事の手を止め、片付けることなく、玄関へと走る。ところが、カバンを忘れたことに気づき、リビングへと急ぎ戻る。遅刻だ、完全に遅刻だ。バス停まで徒歩で5分、学校前まで15分。バスに乗り遅れることなど、想定外の状況だ。いつもなら歩いて向かう道のりを、自転車に乗って走りだす。一か八かの賭けに出た。自転車なら、バスの走らない近道を通行できるからだ。
俺、櫻井蒼真(さくらいそうま)16才。蒼髪青眼で、身長175センチ。市内の私立新津中央高等学校へ通うごくごく普通の、高二生だ。成績はよくも悪くもないという感じだけど、今は、部活のサッカーの事で頭がいっぱいなんだ。
ともかく、今は高二春の新学期から部員募集にも参加できず、焦って登校してるのが現状な訳で、遅刻よりも寧ろ、重要視しているのはそこである。
無意識に、とにかく無我夢中に自転車を走らせる。上り道に入ると自然と腰が浮き、ペダルを漕ぐ足にも力が入る。見渡す限り海の、見晴らしの良い坂道を登り切ると、少し薄暗い林道へと突入する。あまり通らない道だが、山を避けて半回転するバスに追い付くためには、ここを抜けるほかないのだ。 案の定、自転車は小さな段差に前輪がはまった事がきっかけで、俺はバランスを崩して激しく横転してしまった。大きな音と共に、タイヤのチェーンの空回りする音が、虚しく宙に響く。
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