21.相愛

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 * 闇雲に走り回り、何とか男達を撒いた。 逃げ込んだ狭い路地裏でハァ、と息をつく。 「…あ、ありがと…っ」 幸子はゼイゼイと胸を押さえて言った。 「いや…」 言いながらグイッと口元を拭う。 殴られた拍子に端が切れ、血の味がした。 「だ、大丈夫…?」 幸子は眉を下げ、泣きそうな顔で言った。 「ん…? うん、大丈夫。こんなのかすり傷だし」 へへっと笑うと彼女は幾らか安心して微笑んだ。 (…つか) 「…先生、何でこんなとこにいんの?」 (同窓会のはずじゃあ…) ポカンとする檜に対し、幸子は取り繕う様に言った。 「あ。秋月くんにご飯…作ってあげようと思って」 確かに以前学校でそんな約束をした。 だけど何でまた今日? と一瞬唖然とするが、別な疑問が浮かんだ。 「…何で俺がここにいるって」 彼女を見つめ、眉をひそめると、幸子はためらいがちに口を開いた。 「秋月くんがバイトしてるの…。知ってたから」 「…。マジ?」 「…うん」 (うわ…、何だそれ) とっくにバレてた事が恥ずかしくて、檜は口元に手を当てた。 「だせ…」 イマイチ決まらない自分が可笑しくて急に笑いが込み上げてくる。
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