573人が本棚に入れています
本棚に追加
「…どうぞ?」
「彼氏いますかー??」
その瞬間、男子生徒は「いいぞいいぞ」と色めき立ち、女子生徒は馬鹿らしいとばかりに息を吐き出した。
教壇に立つ幸子はお決まりの台詞に苦笑する。
「…うーん。丸橋くん、出来ればプライベート以外でお願いできる?」
「ノーコメっすかー?」
「そうね」
「じゃあ歳はいくつですかー??」
丸橋と呼ばれた、その生徒の周りでまたも笑いが起きる。
幸子は困ったな、と少し笑い、24です、と答えた。
(…24。って事は8こも上…??)
檜は目を丸くした。
(見えねー…どっからどう見ても十代…かハタチ。大学生かと思ってた)
檜は引き続き質問攻めにあう幸子を見つめる。
(ま、大学生じゃ先生にはなれないか…)
「…ええと、それじゃあ出席取るわね」
幸子は質問を切り上げ、手に持った黒のバインダーを開いた。
「…読み方が違ったら教えて下さい。ええと。…秋月……ひのき…? くん」
教室は相も変わらずざわついているが返事は無かった。
「…秋月くん、読み方…違ったかな?」
彼女は窓際に座る檜へ目を向けた。
俯きながら大きな欠伸をし、全く反応を見せない。
幸子は困った様子で首を傾げた。
「なんだよ檜~、ソッコー無視かよ~??」
男子生徒の一人が高らかに言う。
最初のコメントを投稿しよう!