1.偶然

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「今日‘waltz(ワルツ)’借りれるってさっき陸から連絡あってさ」 「マジ…?」 「マジ。キャンセルで空きが出来たって、アニキから連絡入ったみたい。 今から行くだろ?」 ‘waltz(ワルツ)’というのは檜が月2で借りるライブハウスの名で、カイの話に出てきた陸の兄が経営を営んでいる。 そこは決して大きな空間では無いが、客は立ち見を含め7~80人入る。 バンドを組んで間もない檜にとっては、充分な広さだ。 檜は視線を宙に泳がせると少しだけ頬を緩めた。 「…まぁ、行くけどさ」 「けど…?」 「こっちでちょっと挨拶したい人がいるから。それが済んだら行くよ」 檜は満面の笑みを浮かべた。 「ずいぶん楽しそうだけど…何か企んでんの?」 「まぁ…そんなとこ。カイにもまた今度話すよ」 「…ふうん。ま、何でもいいけどさ」 檜から視線を外すとカイは笑って言った。 「じゃ、また来る時連絡ちょーだい」 「オッケ」 立ち去るカイの背を一瞥すると、檜は反対方向へ歩き出す。 階段を下り職員室前の廊下で足を止めた。 「セ~ンセ…!」 用事を済ませたのか、丁度幸子が扉から出て来た所だった。 檜の陽気な声に反応して振り返る。
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