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「今日‘waltz’借りれるってさっき陸から連絡あってさ」
「マジ…?」
「マジ。キャンセルで空きが出来たって、アニキから連絡入ったみたい。
今から行くだろ?」
‘waltz’というのは檜が月2で借りるライブハウスの名で、カイの話に出てきた陸の兄が経営を営んでいる。
そこは決して大きな空間では無いが、客は立ち見を含め7~80人入る。
バンドを組んで間もない檜にとっては、充分な広さだ。
檜は視線を宙に泳がせると少しだけ頬を緩めた。
「…まぁ、行くけどさ」
「けど…?」
「こっちでちょっと挨拶したい人がいるから。それが済んだら行くよ」
檜は満面の笑みを浮かべた。
「ずいぶん楽しそうだけど…何か企んでんの?」
「まぁ…そんなとこ。カイにもまた今度話すよ」
「…ふうん。ま、何でもいいけどさ」
檜から視線を外すとカイは笑って言った。
「じゃ、また来る時連絡ちょーだい」
「オッケ」
立ち去るカイの背を一瞥すると、檜は反対方向へ歩き出す。
階段を下り職員室前の廊下で足を止めた。
「セ~ンセ…!」
用事を済ませたのか、丁度幸子が扉から出て来た所だった。
檜の陽気な声に反応して振り返る。
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