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笑いながら小さく手を振る檜を見て、幸子は目を見張った。
「…。あなた高校生だったの??」
幸子の反応に首を傾げると、檜は彼女へと歩み寄る。
「そうだけど…。そう言うあんたは思ったより歳くってたんだ?」
「歳くって、って…。あたしはまだ20代前半よ!」
「…つか、そんな事よりさ」
しかめっ面で睨む幸子に目もくれず、彼は楽しそうに続けた。
「あん時の約束、ちゃんと守ってよね? 桜庭幸子センセ…?」
幸子は口をポカンと開け、仕方がないと言いたげに溜め息をついた。
「…今更だと思わないの?」
言いながらポケットから取り出したピンク色の携帯が檜の手に渡る。
「思わないよ。これも何かの縁ってやつ…?」
素早く彼女のアドレスを自分の携帯に移し、はい、と返す。
「そうね…。まぁ偶然、会ったわけだしね」
再び携帯をポケットに仕舞うと、幸子は睫を伏せて呟いた。
「偶然、と言えば偶然だけどさ」
「え…?」
檜は幸子を見据え、意味深な笑みをもらした。
「車の助手席。ここの名前の入った封筒が置いてあった」
その言葉に幸子は息を呑んだ。
「学校の書類…。
そっか…。あの日はここの帰りだったから。
たったそれだけであんな事言い出したの…?」
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