1.偶然

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「まぁね。…けど既に先生だとは思わなかった。 教生かな~?とは思ったけど」 得意げに笑う檜を見て、幸子は呆れたと息を吐き出した。 「…それはそうとさぁ、先生」 「なに?」 「彼氏いんの?」 幸子の口からまたもや大きな溜め息がもれる。 「…秋月くん、それはさっきノーコメントって」 「じゃあいないんだ?」 「いるわよ…! ちゃんとっ」 ムキになる幸子を見て、檜は声を出して笑った。 「ごめんごめん。そっか、いるのかぁ~。残念だなぁ~」 とても残念そうな口振りでは無い。 「ちなみにその彼氏とは付き合い」 「とにかく…! 約束はちゃんと守ったでしょ? 分かったらさっさと帰りなさい!」 幸子は取り繕う様に檜の言葉を遮った。 「アハハっ! 先生みたいな事言ってる~」 無言で幸子の睨みが飛んでくる。 「ハイハイ、帰りますよ~。あ、先生」 「なによ?」 「また後でメールするから」 親しみを込めた口振りに幸子は僅かに戸惑った。 「じゃあまたね~」 陽気にヒラヒラと手を振る後ろ姿。幸子は呆気に取られたまま彼を見送る羽目になった。 「…ユニークな子」 眉を下げポツリと呟いた。 そして教師と生徒という二度目の出会いに、奇妙な偶然を覚えた。
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