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「まぁね。…けど既に先生だとは思わなかった。
教生かな~?とは思ったけど」
得意げに笑う檜を見て、幸子は呆れたと息を吐き出した。
「…それはそうとさぁ、先生」
「なに?」
「彼氏いんの?」
幸子の口からまたもや大きな溜め息がもれる。
「…秋月くん、それはさっきノーコメントって」
「じゃあいないんだ?」
「いるわよ…! ちゃんとっ」
ムキになる幸子を見て、檜は声を出して笑った。
「ごめんごめん。そっか、いるのかぁ~。残念だなぁ~」
とても残念そうな口振りでは無い。
「ちなみにその彼氏とは付き合い」
「とにかく…! 約束はちゃんと守ったでしょ? 分かったらさっさと帰りなさい!」
幸子は取り繕う様に檜の言葉を遮った。
「アハハっ! 先生みたいな事言ってる~」
無言で幸子の睨みが飛んでくる。
「ハイハイ、帰りますよ~。あ、先生」
「なによ?」
「また後でメールするから」
親しみを込めた口振りに幸子は僅かに戸惑った。
「じゃあまたね~」
陽気にヒラヒラと手を振る後ろ姿。幸子は呆気に取られたまま彼を見送る羽目になった。
「…ユニークな子」
眉を下げポツリと呟いた。
そして教師と生徒という二度目の出会いに、奇妙な偶然を覚えた。
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