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「桜庭ってあの若い…?」
あつあつのトーストを片手に、カイは正面に座る檜に目を向けた。
「そ。俺んとこの担任で、ちなみに英語教師」
グラスへと牛乳を注ぎニヤリと笑う。
一瞬の間を置き、カイはなるほどと相槌を打った。
テレビから届く天気予報をBGMに、トーストと目玉焼きをペロリと平らげる。
玄関からは仕事へ向かう父を送り出す、母の声が聞こえる。
秋月家の朝の風景だ。
‘今日の花粉情報’を告げるお天気キャスターを見て檜は言った。
「先生はあんなお姉さんよりよっぽど可愛い。そう思わないか…?」
檜の問い掛けにカイはテレビを見る。
「…。その先生がヒノキのマイブームなのは分かったけどさ」
「なんだよ?」
「水城奈々はどうするつもり?」
「ナナか…」
「ヒノキはてっきり好きなんだと思ってた」
カイから視線を外し、檜はグラスについだ牛乳を飲み干した。
「好きだよ? …けどナナはモテるし。あいつばっかに構ってらんない」
「要は面倒くさくなっただけだろ?」
「ご名答」
陽気に指差す檜を見て、やれやれとカイが肩をすくめる。
「どうせ水城奈々のポストにその先生を充てるつもりだろ?」
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