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「それじゃあカイ、また後でな~」
「おう」
廊下でカイと別れ、檜は教室に入った。
壁に掛かった時計に目をやると針は8時47分を差していた。
予鈴はさっき鳴ったばかりだ。
檜の通う西陵高校(セイリョウコウコウ)は坂の上に建ち、走ってきたせいか若干息があがっている。
ギリギリセーフだな、と思い、日の当たる机上に鞄を下ろす。
「おはよー檜。今日は遅かったね? 寝坊した?」
「ナナ…」
振り返ると奈々が口元に手をやり、クスクスと笑っていた。
「いや、カイと喋ってたら遅くなった」
「そーなんだ?」
言いながら奈々の目がキョロキョロと動く。
周りを気にしているのか、声のトーンを下げ、檜を上目遣いで見つめた。
「…あのさぁ、檜。今日、は…?」
檜は真顔で奈々を見た。
目が合うなりその頬に赤みがさし、奈々は恥ずかしそうに俯いた。
奈々の様子から何を言わんとしているのか察知する。
「…。うん、いいよ?」
少しだけ考えて返事を述べた。
「あ…。じゃあまた帰りにね…?」
言葉と同時に本鈴が鳴る。
奈々は顔を上げ破顔すると、自分の席へと戻って行った。
その背を見送り、檜は短く息を吐いた。
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