2.興味

6/14
565人が本棚に入れています
本棚に追加
/330ページ
いつもカイには何でも話すが、先生については今はまだ何も言えない。 檜は閉じた教科書に肘を置き、頬杖をついた。 何気なく斜め後ろを振り返ると、奈々の視線とぶつかった。 恥ずかしそうにはにかむ奈々を見て口元を緩める。 「…それじゃあ教科書の10ページ、頭から。今日は11日なので出席番号11番、21番、31番、1番の順で当てていくわね?」 授業を始める幸子を余所に、檜はぼんやりと窓の外を眺めた。 春らしい陽気が妙に心地良く、思わず瞼が下がる。 ――去年の夏、奈々と関係を持つ様になった。 奈々に告白をされ、誰とも付き合うつもりは無いと軽く断ったのだが、奈々はそれで退かなかった。 『奈々ね…。経験無いんだよね』 放課後の教室。 風になびくカーテンを背に、奈々がポツリと呟いた。 『最近友達の会話にもついていけないし…秋月くんさえ良ければ…。奈々としない?』 アヒル口で笑うピンク色の唇が印象的だった。 小悪魔の誘惑に心が揺れ、結果、一度きりという約束で奈々を受け入れた。 しかしどういう訳かその行為が今もズルズルと続いている。 「はい…じゃあ次の段落を…。秋月くん」 出席簿を確認し、幸子が窓際に目を向ける。
/330ページ

最初のコメントを投稿しよう!