2.興味

7/14
前へ
/330ページ
次へ
「秋月くん…?」 また無視されているのかと幸子は顔をしかめた。 「あ、はい。スイマセン」 二度目の呼び掛けでハッと我に帰る。 どうやらウトウトと船を漕いでいた様だ。 「4段落目、読んで訳してくれる…?」 「え…っと。何ページの?」 クスクスと女子の笑い声があがる。 「11ページよ。上から3行目。 …Such a~ から4行。分からない単語があったら言って…?」 教科書を手に取り慌ててページを捲る彼を見て、幸子はため息をついた。 しかし次の瞬間。 彼女は耳を疑った。 「…Such a proverb is here. ‘Rome was not built in a day.’ That is the meaning of 'A big business isn't accomplished by little time and the efforts.' ……こんな諺(コトワザ)がある。‘ローマは一日にして成らず’…それは、‘大事業はわずかな時間と努力で成し遂げられるものではない’という意味だ」 幸子は檜を見つめたままポカンと口を空けた。 指で4行と数え、檜は席についた。 「…あ、ありがとう。 びっくりした! 秋月くん、発音も訳も完璧じゃない? 今の所は割と難しかったんだけど…」 「どうも」 したり顔でニッコリ微笑む。
/330ページ

最初のコメントを投稿しよう!

573人が本棚に入れています
本棚に追加