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「秋月くん…?」
また無視されているのかと幸子は顔をしかめた。
「あ、はい。スイマセン」
二度目の呼び掛けでハッと我に帰る。
どうやらウトウトと船を漕いでいた様だ。
「4段落目、読んで訳してくれる…?」
「え…っと。何ページの?」
クスクスと女子の笑い声があがる。
「11ページよ。上から3行目。
…Such a~ から4行。分からない単語があったら言って…?」
教科書を手に取り慌ててページを捲る彼を見て、幸子はため息をついた。
しかし次の瞬間。
彼女は耳を疑った。
「…Such a proverb is here.
‘Rome was not built in a day.’
That is the meaning of 'A big business isn't accomplished by little time and the efforts.'
……こんな諺(コトワザ)がある。‘ローマは一日にして成らず’…それは、‘大事業はわずかな時間と努力で成し遂げられるものではない’という意味だ」
幸子は檜を見つめたままポカンと口を空けた。
指で4行と数え、檜は席についた。
「…あ、ありがとう。
びっくりした!
秋月くん、発音も訳も完璧じゃない? 今の所は割と難しかったんだけど…」
「どうも」
したり顔でニッコリ微笑む。
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