2.興味

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「先生、秋月くんは帰国子女ですよ~?」 女子から声があがった。 「帰国子女…? え、そうなの…?? 秋月くん」 意外な言葉に、幸子は見開いた目で檜を見る。 「…まぁ、一応」 言いながら教科書に目を落とした。 今まで幾度も見てきた反応だ。 ‘どの国にいたの?’ ‘いつまでいたの?’ いつもなら続けざまにそう訊かれてきた。 檜はその質問が返ってくるのを今か今かと待つ。 しかしながら幸子はそれじゃあ、と引き続き授業を始め、彼から目を逸らした。 (あれ…?) 思わず首を捻った。 (英語教師なら食いついてもいいネタなのに…) 文法を板書しながら、その説明をする幸子に目を向ける。 (…ちょっとは興味もてよなぁ) 面白くないと言わんばかりに、ため息だけがもれた。  * 午前授業が終わり、昼休みを告げるチャイムが鳴る。 クラスの男子と学食でお昼を済ませ、個別に外の自販機へと立ち寄った。 ビー…。 音を立てて出てきた紙パックのコーヒーにストローを刺した所で、ふと手が止まる。 (あれ…? 先生だ) 男子生徒に呼び止められたのか、一階の渡り廊下に幸子がいた。 話をしている生徒はどうやら3年生らしい。
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