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空になった紙パックをゴミ箱に捨てると、檜は興味本位で近付き、耳を澄ました。
「先生ってカレシいんの?」
「…? どうして?」
「…いや、先生の事最初見た時からいいな~と思ってて」
そう言って男子生徒は照れ臭そうに頭を掻いた。
(え、マジ…? 告白されてんの…??)
呆気にとられ思わずあんぐりと口を開けてしまう。
「…気持ちは嬉しいけど…ごめんなさい」
幸子は困った様に微笑んだ。
大人の女が難なく事をやり過ごす、そんな雰囲気が滲み出ている。
男子生徒は「いや、いいんです」と愛想笑いを浮かべ、それじゃあ、と背を向けた。
(…ふ~ん。‘気持ちは嬉しいけど’か。無難な答えだな)
去って行く男子生徒を見送る彼女の表情を、ジッと観察する。
しかしそこからは、罪悪感といった感情は全く読み取れない。
(もしかして…慣れてんのかな…? まぁ可愛いから別に不思議ではないけど)
幸子から視線を外し、ズボンのポケットから携帯を取り出す。
素早く一通のメールを作成し、送信ボタンを押した。
【How many people are you confessing to at school?】
英語教師をからかおうと、あえて英語で書いた。
程なくして幸子の携帯が鳴った。
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