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届いたメールを確認する彼女を、少し離れた所から見守る。
幸子は携帯を開け、少し考えた素振りを見せると、キョロキョロと辺りを見回した。
「ここで告白されんの、何人目?」
歩を進め、幸子へと近付く。
メールに書いたものと同じ質問をした。
今度は日本語で。
それに反応して彼女は、あ、と小さく呟く。
「秋月くん…。見てたの?」
「まぁね?」
「…」
幸子は楽しそうに笑う檜を見て、困った様に眉を下げた。
「随分無難に返事してたけど。言ってやりゃあ良かったのに」
「何を…?」
「‘彼氏いる’って」
ひとつ小さく嘆息すると、幸子は彼から目を逸らし、そうね、と静かに言った。
(ん…?)
適当な相槌に檜は首を傾げた。
「…あ」
「…?」
「そう言えば秋月くん、帰国子女ってどこに住んでたの??」
「え、今さら…?」
唐突な質問に思わず吹き出してしまう。
その反応に、幸子は疑問符を浮かべ、
「授業中そんな事訊けないでしょ?」
と真顔で言う。
「先生ってばマっジメ~!!」
「あのねぇ…」
「ロンドン」
「え?」
「イギリスのロンドンだよ。11までいた」
言いながら懐かしそうに微笑む。
「じゃあ…。もしかして※バイリンガル…って事?」
「そっ!」
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※バイリンガル
2か国語を母語として自在に使えること・人。
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