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希少価値な物を見る様に、幸子は目を丸くした。
そして口元を緩める。
「…いいなぁ」
「え?」
「あたしも秋月くんみたいに英語ペラペラだったらなって思う。発音下手っぴなの」
肩をすくめ、幸子は恥ずかしそうに顔をほころばせる。
その笑顔は檜の目を釘付にした。
(こんな風に笑うんだ…初めて見たかも)
幸子を見つめ真顔になる。
何か言いたげな表情を浮かべる檜に、彼女は首を傾げた。
「…先生って笑うとえくぼ出来るんだ?」
「え、あ…」
やだ、と呟き、幸子は赤く染まった頬を押さえた。
どうやら気にしている様だ。
檜は幸子を見つめ直した。
笑うと小さく出来るえくぼも含め、その仕草を見て改めて可愛いなと思う。
8つも歳が離れてるなんて嘘みたいだ。
授業中こそ先生らしく見えるが、プライベートで話してみると、その口調はおっとりしていて女らしい。
先生を可愛い、と。
思った事を素直に述べようとしたその時。
ポケットに入れた携帯がヴー…と振動し始めた。
「あ…秋月くん、携帯」
赤面した事を取り繕う様に幸子が言う。
「え…、ああ」
ポケットに手を入れ携帯を取り出すと、サブディスプレイにはカイの名前があった。
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