2.興味

14/14
前へ
/330ページ
次へ
 * その日の放課後、帰り支度をする奈々に後方から声がかかる。 「…ナナ」 長い髪を揺らし振り返ると、そこにはクラスメートである内田の姿があった。 6時間目が終わり、最早教室にはまばらにしか人がいない。 「なぁに…?」 奈々は愛嬌たっぷりに小首を傾げる。 「今日みんなで帰りにカラオケ行こうって言ってるんだけどさ、ナナも来ないか?」 「…みんな?」 「ほら、瀬尾や石川もさ。ナナ、仲良いだろ?」 奈々の視線に、内田は取り繕う様に慌てた。 奈々はチラリと目線だけで窓際の席を見やる。 空席になった彼の机。 「…それ、檜は来ないでしょ?」 「ああ、さっき声掛けたんだけど用事があるとかで断られた」 「そう…」 少し考える素振りを見せると、奈々は口角を上げ、にっこりと微笑んだ。 「奈々も行かない。用事があるの」 「え…」 ごめんね? と付け足し、奈々はクルリと背を向けた。 その場に取り残された内田は残念そうに顔をしかめ、チ、と舌打ちをもらした。
/330ページ

最初のコメントを投稿しよう!

573人が本棚に入れています
本棚に追加